レイニー ブルー

妻は普段朝は6時ごろに起き、起きてすぐに洗濯機を回しコーヒーを飲みながら撮りためていたドラマを見ます。

7時前位に毎朝私は妻に起こしてもらい、それから私は洗濯物を干します。

その日私は休みの日でしたが普段通り7時に起こしてもらい洗濯物を洗濯機から取り出しながら妻に聞きました。

「今日は天気いい?」

「天気悪いわ、雨の音が聞こえんのか?」

どうやら妻は普段通り朝から機嫌が悪いようです。

私は全く雨音が聞こえなかったため、居間のカーテンを開け外を確認すると滝のような大雨が降っていました。

私はとても気分が落ち着くので雨の日はとても大好きです。

「本当だ雨だね、でも俺にとってはいい天気だね。」

私のその言葉を聞き、妻はぬるくなり冷たさしか感じさせないコーヒーを飲みながら呟きました。

「慣れんわー。」

私は妻が呟いた言葉の意味がよくわかりませんでした。

多分妻の実家で飼っている猫が妻には一切なつかない事を思い出したのでしょうか、妻が実家に帰ると猫はいつも歯をむき出しにして唸ります。

それから私は室内に洗濯物を干し、その日は用事があったため車を使う事になり妻を職場まで送る事になりました。

妻の職場に着くまでの間も雨が強く降りしきっていました。

職場に向かう妻の心を少しでも安らげてあげようと思い、私は運転中の車内の中で妻に伝えました。

「俺が雨が好きな理由はね、多分落ち着くからが一番の理由じゃなくて君と・・・」

「黙って前見て運転しろー。」

妻は私の言葉を遮り叫びました。

「慣れんわー。」

妻がまたしても同じ言葉を呟きました、これはもしかして実家の猫の事ではなく私の事を言っているのでしょうか。

「もしかして俺の事?」

「当り前じゃ。」

結婚してもう10年、付き合いだしてからで言うと20年です。

私も妻がボーっとしている時の顔はまだ慣れていませんが、妻も私の美しい言葉にまだ慣れていないようです。

「何でこれだけ一緒におるのに慣れんの?」

妻は私のその言葉を聞き噛みしめるように言いました。

「慣れたくない、感覚麻痺したくない。」

その言葉を聞き私は少し前に雑誌で見た血液型の相性診断を思い出しました。

「A型男性とB型女性は相性が悪いと言われているけど、お互いに歩み寄る気持ちさえ持てば2人の相性は抜群かも!」

どうやら妻は一切歩み寄る気持ちはない模様です。

さとり

私が休みの日は妻が仕事終わった後に職場に迎えに行き、夕食の買い物に妻の職場の近くのスーパーのハローズに寄ります。

ハローズは食品だけでなく焼き立てのパン屋も併設しており、パンもとても美味しく時々パンも購入します。

その日は妻が食品を購入している間とても暇だったため店の隅っこにあるガチャガチャのコーナーを見ていました。

ガチャガチャの機械も20個位置いてあり面白いものがたくさんあります。

以前はシャクレルプラネットという、しゃくれている動物のガチャガチャにはまっていましたが、その日私の目に留まったのは合掌している動物のガチャガチャ「合掌 Gassho 3拝」です。

合掌している北極熊が可愛く、どうしても欲しくなりました。

値段も200円とお手頃だったため一回くらいであればいいかと思いガチャガチャを回ししてみると、何と合掌している北極熊が一発で当たりました。

私はとても嬉しくなり買い物を終えて商品を袋に詰めている妻に報告に行きました。

「ねーねー、ガチャガチャで一番欲しかった合掌している北極熊が当たったんよ。」

妻は北極熊にチラッと目を移しました。

「可愛いやん。」

妻にも褒めてもらい私は嬉しくなり北極熊をずっと見つめていました。

北極熊の細部も気になり裏返して北極熊の背中を見た所、デジャブが起こりました。

初めて見たガチャガチャにも関わらず何度もこの背中を見た事があります。

私は何度も何度も北極熊の前面と背面を確認しました、何度も見ていると合掌している北極熊の手が仕事が終わって家に帰り居間でコーヒーを持っている手にしか見えなくなりました。

私は商品を袋に詰めている妻の顔を盗み見し、こっそり妻の後ろ側に回り背中を確認しました。

北極熊は妻で、妻は北極熊です。

そう心の中で確信した時に妻は叫びました。

「私は北極熊じゃないんよ!」

どうやろ妻は北極熊ではなく人の心が読める妖怪、さとりになったようです。

普段は常に世界平和と戦争で両親を亡くした子供たちの事を考えている私の美しい心が読まれてしまわないように、もっとふざけて生きていこうと思います。

新年の目標

明けましておめでとうございます、2020年になりました。

せっかくの年始なので今年の目標を決めようとおもいます。今年は心に決めた事があります、家族と仲良くします。(特に妻と)

今までさんざん妻に暴言を吐かれてきましたが全て妻に責任がある訳ではなく、私にも責任があると思っています、一割位。

私が心がけを変えれば妻も体型以外は変わってくれると信じて行動しようと思います。

仲良くするためには、まずは妻と意識合わせが必要です。

1月1日に朝起きて朝食を食べ一段落した後に妻に聞いてみました。

「俺の事どう思っている?」

ここでの妻の回答が重要です、不意に質問をした時に人は本音がでるからです。

「風呂掃除が甘い、カビだらけよ。壁ちゃんと洗ったんか!」

斜め横から回答がきました、私はうろたえました。

「俺のせいじゃない。」

「あんたのせいよ!」

心に決めた目標があっという間にしぼんでいきました。

しかしここで折れてしまうと以前と変わりません、私は心に決めたのです。

妻と仲良くするんです、逃げちゃだめです。もう少し突っ込んで聞いてみました。

「それはわかった、他には?もっと何かあるやろ。」

「お金がないのに飲みに行きすぎよ。」

私は週2回ペースで飲みに行きます、ただ私にも言い分があります。

「まあ待て、何で飲みに行くかって言ったら皆が俺を求めてるからよ。俺が行ったら皆が楽しいって言ってくれるから行くんよ。皆が仕事を頑張ってるから俺が癒してるんよ。」

コールセンターの仕事はクレームも多くてとてもストレスが溜まりやすい仕事です、飲みに行く事で少しでも会社の仲間のストレスの発散になるのであればそれに越した事はありません。

その言葉を聞いて妻は私に言いました。

「いや違う、あいつは飲み会に誘わんかったらずっとこっち見てるよって言われとるよ。」

「うるさい!!!」

今年もいつもと同じ1年になりそうな予感がした1月1日でした。