休日の会話

ある休日の出来事です。

その日は妻と休みが合ったため車でイオンに買い物に行く予定を立てました。

娘は家でゲームをしたいらしく外出を渋り家で留守番をする事になりました。

お昼ご飯を食べた後、車に乗り込み妻が助手席に座りました。

妻の重みで車が左側に異様に傾きましたが、その事には触れず平静を装い妻に話しかけました。

「久美(仮名)、今日は何を買う予定?」

「何呼び捨てにしよるんよ。」

普段私は妻をちゃん付けで呼んでいるため違和感を感じたようです。

「あんたは何を買うか聞いているんよ。」

「誰があんたなん!」

妻とは結婚して10年たちますが呼び捨てもあんたも妻の意にそぐわないようです。

「呼び捨てもあんたもダメやったら何て呼べばいいんよ、俺はがんじがらめか。」

「久美ちゃんよ。」

その言葉を聞き心に思っていた言葉が咄嗟に漏れ出てしまいました。

「ちゃん付けする面構えか!」

その言葉を言った瞬間、ほっぺたに強い衝撃を受けました、どうやら妻から強烈なびんたが飛んできたようです。

窓の外に血の滲んだ唾をはき、険悪な雰囲気が続いていましたがとりあえずイオンに向かって車を走らせました。

目的地に向かう途中、先ほどの事は何もなかったように妻は私に話しかけてきました。

「昨日、仕事が大変やったんよ。急ぎの仕事で終わらせんといけんのに誰も手伝わんし手伝いにきたかと思っても少ししたらすぐ自分の持ち場に戻るし。休み明けもしんどいと思うわ。」

そこで妻の話が終わり、1分程待ちましたが妻から続きの話がありません。どうやら今の話はそこまでで終わりのようです。

「え、オチは?」

「ないよ、それだけよ。」

当たり前のように妻は言いました。オチもなく話しかけてきた妻の勇気に乾杯です。

「オチがない話を何でしてきたん?今の話だけだったら20点よ。」

妻はその言葉を聞き小さく溜息をつき外を見つめ呟きました。

「休みの日位、ボケとかオチがない話がしたいんよ。」

その言葉を聞き嫌がる妻にM1グランプリに一緒に挑戦しようと持ち掛けていた自分が恥ずかしくなりました。

次は娘をM1に誘ってみようかと思います。

私の娘

私の娘は小学4年生でもうすぐ10歳になります。

小学校にあがる前まではよく私に顔が似ていると言われることが多くありました。

友人に娘の写真を見せると「笑顔が可愛い。」、「目元がいいね。」等とたくさん褒められていました。

ところが成長するにつれ妻にそっくりと言われるようになってきました。

私から見ても娘の外見は妻よりになってきました。

最近も近所のおじいちゃんから「お母さんとそっくりやね。」と言われたらしく落ち込んでいました。

そんな娘でも仲がいい男子がいるらしく「私の事が好きな男の子がいて、いい感じなんよ。私モテるから。」と言ってきました。

娘の顔でモテると聞いて不思議に思いましたが、よく考えてみると確かにモテる要素は男女とも顔だけではありません。

素直で、優しくて、明るくて、上品で、お洒落な人はモテると思います。

娘もそういった部分で周囲に受け入れられてモテているんだと思い納得した日の夜の出来事です。

その日は妻が夕飯に牛丼を作ってくれました、娘も私も丼ものは大好きです。

妻の作ってくれる牛丼は味が濃くとても私の好みです、私が味わって食べていると妻が叫びました。

「かきこまない!」

叫び声を聞いて娘に目を向けると、分厚い唇をどんぶりにつけ箸でわしゃわしゃとご飯をかきこんでいます。

飢えきった痩せ犬でしょうか?いいえ少し太めの愛娘です。

「牛丼は飲み物よ。」

娘は妻の叫びを意に介さずかきこんでいます。

私が驚愕のまなざしを向けている間に娘は牛丼を食べ終えました。

顔にたくさんご飯粒をつけた娘はもう食べれんと呟き寝転びました、食べ過ぎて腹が膨らんでいます。

大股を開き寝転んでいる娘を見ていると疑問がわいてきたので質問を投げかけてみました。

「何でモテてると思ったん?」

娘は即答しました。

「顔とスタイルよ。」

素直で明るくて少し勘違いしやすい娘の未来は明るいと思います。

風船

娘は風船が好きです。よく風船を膨らまして私と風船を投げ合って遊びます。

そんな娘が妻と買い物に行った際に100円均一のSeriaでビーズ入りの風船を買ってきました。

膨らますと無数に入ったビーズが静電気で揺れてとても綺麗です。

娘はその風船で無邪気に遊んでいましたが私は嫌な予感しかしません。

私は未来が見えました、娘は絶対に割って片づけを手伝わされるです。

そんな私の気持ちも知らず娘は言いました。

「パパ、風船ポンポンしよう。」

6畳の座敷で娘と向かい合い、真ん中に紐でラインを引き下に落とした方が負けというシンプルなルールです。

20点先取した方が勝ちというルールを作り遊び始めました。

娘は何も考えず風船を思いきりバトミントンのスマッシュのように手でたたきつけます。

思いのほか頑丈で風船は割れません。

「パパ、まだまだやるよ。アハハ!」

割れてしまった後の掃除を考えずに娘はバカ笑いをしながら風船を思いきりたたきつけます。

30分程遊び20対13で私が勝ちました。

私は少し疲れてしまったので座敷で横になり娘は居間でゲームをするようお願いしました。

いつの間にか寝てしまい1時間ほどして目が覚めました。

娘が座敷に来て叫んでいました。

「パパ、風船割れてるよ。パパのせいよ!」

寝ている時に足の間に風船を挟んでしまって割ってしまったようです、足元には無数のビーズが散らばっていました。

「パパのせいよ、何とかして。」

夢の中で人を殺しただけなのに犯罪者になった気分です。

「わかった、片付けるからあんたも手伝って。」

娘と一緒に座敷のビーズを拾っていましたが数が多すぎて全然片づけが進みません。

「コロコロで片付けたら?」

娘が提案してきました、私は娘の提案にのり居間からコロコロを持ってきてもらいました。

コロコロを使うとあっという間に座敷に転がっているビーズが片付いていきます。

「これやったらすぐ片付くから向こうの部屋に行ってていいよ。」

「何で、私も手伝うよ。」

娘は不満そうです、私はそんな娘に本音を伝えました。

「もういい、あんたは都合のいい女よ。」

その言葉を聞き怒った娘は私につかみかかってきました。

娘を足払いで座敷の端にたたんでいる布団に投げ飛ばし私はコロコロをしました。

娘は布団から起き上がった瞬間私は再度足払いで布団に投げ飛ばしコロコロをします。

何度かそれを繰り返し、結局風船の片づけに貴重な休みの1時間をかけてしまいました。片付けが終わりましたが私の言葉に怒った娘はしばらく口をきいてくれませんでした。

Seriaさん、どうやらビーズの風船は片づけの時間と娘の仲をさいてしまう悪魔の風船のようです。

新記録

私はコールセンターに勤めており輪番勤務の為、土日平日関係なく休みがあります。

妻は普段土日が休みで、土曜日が仕事の時も多くあります。

そんな妻が先日、平日に有給休暇を取得し、たまたま私と休みが被りました。

娘は当然学校ですから娘が登校した後、朝食に近くのコメダ珈琲に行く事にしました。

子供抜きで一緒に出掛けたりする事は最近ほとんどしていません。

その日私は久しぶりに妻と2人で出かける事がとても楽しみで7時ごろに目が覚め、すぐ布団から飛び起き居間にいきました。

妻はいつも通り朝6時ごろに起きたらしく体育座りをして冷めて美味しくもないコーヒーをすすりながら撮りためていたTV番組を見ていました。

妻はしかめっ面で私を一瞥しTVに目線を戻しました。

「今日は素敵な一日になりそうだね。」

最高の笑顔と最高の声で妻に話しかけた所、妻はボソッと呟きました。

「気持ち悪い。」

まあこの程度の言葉に反応していたら私の妻の旦那としてはやっていけません。

私は気にせずクッションの上に座りスマホを触っていました。

それから娘を起こし、娘は朝食を食べ学校に行く準備をし7時30分過ぎに家を出ていきました。

私は出かける前に洗面所で顔を洗い鏡に映った自分の顔を見つめました。

「やっぱりカッコいいな。」

私は自分に自信を付けるために毎朝自分の容姿を褒める習慣があります。

「気持ち悪い。」

少し離れた場所から誰かの声が聞こえてきました。

私は気にせず外出用の服に着替え8時頃に妻と車で出かけました。

普段は娘と一緒に後部座席に座る妻ですがその日は私の隣に座りました。

妻が隣に乗った事に嬉しくなり心からの言葉を妻に伝えました。

「君が隣に乗るって何か新鮮だね、幸せって身近な所にあるんだね。」

「気持ち悪い。」

店に着くまでのドライブ中、外はとても晴れており青空が広がっていました。

「こんな何でもない日常を大事にしていきたいね。」

「気持ち悪い。」

コメダ珈琲に着き私と妻はモーニングサービスの手作りたまごペースト付きのトーストとアイスのミルクコーヒーを頼みました。

トーストがとても厚みがあったのですが柔らかくとても食べやすく私は2枚注文しました。

2枚目を頼む時にどこからか舌打ちが聞こえましたが気にせずに注文しました。

「朝からこんなに食が進むのは美味しいからっていうのもあると思うんだけど、楽しい時間を過ごせているからかもね。」

「気持ち悪い。」

朝起きてからコメダ珈琲で朝食を終えるまでの間に「気持ち悪い。」の言葉が合計10回聞こえてきました。

朝起きてから朝食を終えるまでに妻に「気持ち悪い。」と言われた回数のギネス記録は確か7回だったと思います。

企業努力のおかげでお得で美味しいコーヒーとモーニングを出して頂いたコメダ珈琲のレシートを見て「高い。」と呟き顔を歪め支払いをしていた妻を見つめ明日ギネスに申請してみようかなと思った出来事でした。