感動

私は詩を吟じる事が好きです。時々ですが会社の空いた時間や家庭で吟じる事があります。

美しい詩を詠う事により私の魂が洗われていきます。

その日は私が夜勤の仕事でしたが7時ごろに目が覚めました。夜勤の時は12時45分から仕事の為、普段は8時~9時頃まで寝ています。

起きて寝室を出ると妻が洗い物をしていました。私は普段通り妻に向かってとびっきりの笑顔で挨拶をしました。

「おはよう。」

妻はコップを洗いながら私の顔を見て言いました。

「何で起きてきたんよ。」

朝から不快な気持ちにさせられましたが、負の感情を負で返すことは良くありません。

私は正の感情で返しました。

「とても目が覚めた時に気持ち良かったから起きないともったいないと思ってね。」

妻はその言葉を聞き何も言わずに軽くため息をつき私から目を逸らし洗い物に目を向け作業を続けていました。

妻の負の感情は続いています、こういった時の対処方法はどうしたらいいのでしょうか?

私は台所に立っている重い身体の妻(妊娠しているわけではなく物理的な意味です。)を1分程見つめている間に思いつきました。

こういう時こそ詩を吟じるべきです、私は最近お気に入りの詩を詠いました。

「私には野望がある、それは夢や希望なんて生易しいものではない。夢だったら諦める事もできる、希望だったら捨てる事もできる。でも野望はこの身が朽ち果てるまで消える事はない。」

妻がその詩を聴き、洗い物をしながら私に聞いてきました。

「何の野望を持ってるの?」

私は高らかに宣言しました。

「彼女を作る!」

妻は洗い物の手を止めずに無言のままです。

洗剤の付いた食器を洗い落とす水の音しか聞こえてきません。

私は詩を詠いスッキリした後、少しのどが渇いたので台所に置いてあるタンブラーを手に取りコーラを注ぎました。

私の使っているタンブラーは長いためコーラを注ぐときにコポコポコポと音が響きました。

その瞬間、妻は叫びました。

「コポコポじゃねーんよ!」

妻は洗い物の手を止め私の首根っこをつかみました。

私は妻に寝室まで引きずられました。

「もう一回寝てこい!」

捨て台詞とともに私を布団に投げ捨て足蹴にした後、ドアを思いっきり閉めて妻は出ていきました。

どこで妻が怒りを覚えたか不明ですがコーラを注ぐ音にまて突っ込むようになった妻に少し感動を覚えた出来事でした。

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